もみの木物語 ~生育環境から伐採、製材、家になるまで~
もみの木ハウスではマルサ工業の手掛ける住宅内装材ブランド「ForestBank(フォレストバンク)」を採用しております。私たちがなぜ内装材にもみの木を選ぶのか「もみの木ハウス9のメリット」でお伝えしてまいりました。では、もみの木はどのような環境で育ち、製材されて、内装材になるのでしょうか?ここではもみの木の生育環境から製材、乾燥、家づくりまでの一連の流れをご紹介させてください。もみの木はドイツを中心にヨーロッパから輸入しておりますが、今回はドイツ産のもみの木のお話です。
持続可能な森林管理・木材生産を行うドイツ
もみの木は、ドイツの山岳地帯・シュバルツバルドで育った物を主に使っています。ドイツの林業は、「フォレスター(森林官)」と称される公務員が国有林の管理にあたり、計画的な年間伐採計画を立てます。まだ成長を続ける若い木ではなく、樹齢250-300年くらいの成長の止まった古いもみの木を選んで切っており、過剰に伐採して森の生態バランスを崩さないように国が管理しているのです。「植林」が中心で、ある程度木が成長すると一気に伐採する日本の林業と仕組み自体が大きく異なっています。ドイツの国土面積は日本とほぼ同じで、森林面積は1/2程度ですが、そこから日本の約3倍の木材を生産しており、ドイツでは林業は国の主力産業です。
ドイツがこのような仕組みになったのは、19世紀初頭に起きた産業革命の影響があります。産業革命によって木材が過剰伐採されたため、森が荒廃して自然災害が起きるようになってしまいました。そこでドイツは「森林法」を制定して、森林の伐採量が成長スピードを超えないように管理する体制を作りました。その管理人として「フォレスター(森林官)」という職業が誕生して、今もなお持続可能な木材生産に取り組んでいます。
厳しい環境を生き抜いてきた「天然更新」のもみの木
ドイツのもみの木は、すべて自然に落下した種子から芽が出て育った「天然更新」の木です。自然交配で厳しい環境を生き抜き、冬の寒さにも耐え抜いてきた強さがあります。さらに樹齢200~300年と大きく成長したものを伐採するので、若い木よりも細胞が多く、もみの木のもつ空気清浄、消臭、調湿、抗菌、蓄熱といった効果がより強く期待できます。樹齢が長いため、木材にしたときに節が少なく見た目が美しいのも特徴です。
日本とドイツの林業は大きく違いがあります。ある程度木が育つと一気に伐採を行うため、樹齢50~60年程度の若い木材が中心になるので、細胞の間隔はもみの木ほど詰まっていません。
クリスマスツリーのルーツは、もみの木の抗菌効果と関わりあり
ドイツのシュバルツバルドに見学に行ったとき、伐採したもみの木から出たおがくずを皆が持ち帰っていました。消臭・抗菌対策に家の冷蔵庫に入れるとのこと。もみの木の持つさまざまな効果は、ドイツでも一般的によく知られており、さまざまに活用されているようです。
もみの木といえば、クリスマスツリーを連想する人も多いはず。ヨーロッパではクリスマス時期になると、家の中にもみの木を飾りますよね。この文化はなぜ始まったのでしょうか? さまざまな説がありますが、実はもみの木の抗菌作用と深い関りがあるのです。
ヨーロッパの冬の寒さは厳しく、ウイルス菌や風土病などの蔓延によって幼児や体の弱ったお年寄りが命を失っていました。そこで抗菌効果のあるもみの木で予防しようと家の中に入れたのがクリスマスツリーの起源と言われています。また、もみの木は冬でも緑豊かで、伐採しても2-3カ月は葉が落ちないため、生命力や神秘性を感じて「永遠の生命の象徴」として神聖視されていたことも背景にあるようです。
ドイツ産のもみの原木を輸入できるマルサ工業の体制
伐採されたもみの木は、ドイツの製材所で検品を行い、年輪の状態などを確認して品質ごとに分けます。特に品質の高いものはドイツ国内で消費する方針であるため、最高品質のもみの木は日本への輸入が難しい状況でした。
そこでもみの木の輸入・製剤を行うマルサ工業では、2020年から現地の製材所と提携。現在は最高品質のもみの木を輸入できる体制を整えています。
木は切り方で性能が変わる
ドイツから輸入されたもみの木は、宮崎県小林市にあるマルサ工業の加工所へ運び込まれて製材されます。もみの木に限らず、木材は切り方で性質が大きく変わることをご存知でしたか? 柾目と板目について説明させてください。
柾目は、木の年輪に対して直角に縦断したものです。丸太の中心部からしか切り出せないため、一本の丸太から限られた量しか採れない希少な部分です。反ったり曲がったりしにくく、調湿性能が高く、木目が美しいという特徴があります。
それに対して、板目板は年輪を切断するように取られており、山形や渦巻きのような年輪模様になるのが特徴です。中心部以外からも製材可能なため、柾目材よりも取れる量が多くなります。強度に優れ、水をはじく性質を持っています。
住宅の内装材に使うマルサ工業のもみの木はすべて柾目で取っています。柾目も板目もそれぞれにメリットとデメリットがありますが、住宅内装材という観点からすると調湿機能のある柾目が最適だと考えているからです。
自然乾燥がポイント
製材したもみの木は、加工所のある宮崎県小林市の乾いた空気に1~4ヶ月間じっくり晒して自然乾燥させます。この自然乾燥も、木材加工の需要なポイントなのです。
木の乾燥方法は、主に機械乾燥と自然乾燥の2通りあります。機械乾燥は数日で水分が抜けて早く加工できるのがメリットですが、熱を加えることで水分と一緒に木の成分まで失われてしまいます。
それに対し、自然乾燥は木の成分を損なうことがありません。また、その効果は半永久的に持続します。マルサ工業ではもみの木材をすべて自然乾燥させております。空気清浄、消臭、調湿、抗菌、蓄熱といった働きするもみの木の成分を失うことなく閉じ込め、住まう人が心地良く暮らせる家づくりに役立ちます。
足触りが良く、スリップしにくい浮造り加工
柾目に製材、自然乾燥させたもみの木材は、最後にマルサ工業の独自ノウハウと高い技術力で加工を施します。
床材に使う「フォレストキング®」は、浮造り(うづくり)加工を施しています。床は、住まいの中で足が直接触れる大切な場所。凹凸のある浮造り加工は、足に適度な刺激があって足触りが心地よく感じられます。ごろんと寝転ぶと気持ちいいですよ。スリップもしにくくなり、子どもたちが走り回ったり、ペットが過ごしたりする上で安心な床板です。
また、木の成分は木材の表面から放出される性質があるので、浮造り加工で凹凸を付けることで表面積を増やし、より効果を高めるというメリットもあるのです。
もみの木の効果は、床面積の2倍使ってこそ得られる
こうして製材、自然乾燥、加工されたもみの木を使って、家づくりを行います。もみの木ハウスの家づくりで大切なポイントは、もみの木を床面積の2倍使うことです。床面積の2倍使うことで、空気清浄、消臭、調湿、抗菌、蓄熱といったもみの木の効果が最大限発揮されるからです。
もみの木の性質や性能を生かすための適正な量を使わなければ、せっかくのもみの木がもったいないです。これはもみの木だけでなく、あらゆる製品に言えることでしょう。もみの木ハウスでは、もみの木の成分を最大限に生かすための製材、乾燥・加工方法、家づくりを追求しております。住まう人が心地良く暮らせること、それを何よりも大切にしたいからです。